ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

「…迷惑だなんて…心配して頂いてありがとうございます」


「彼氏なんだから、当たり前だろう。あっ、これ、ゼリーに栄養ドリンク、風邪薬、後、スポーツドリンク買ってきたんだ」


手に持っていたビニール袋を覗きながら、浜田さんは玄関内に入って来る。


「…ありがとうございます」


ビニール袋をもらって帰ってもらおうと受け取ろうとするのに、浜田さんは靴を脱いで部屋に上がってしまった。


どうしよう…


今は1人でいたいのに…


彼氏なのに煩わしいと思ってしまう。


その浜田が、少し腰をかがめ顔を近づけてくる。


キスされる…


咄嗟に、浜田の胸を押し距離をとった。


拒絶されると思っていなかった浜田は、とても驚いた表情をした。


あっ…


無意識に、拒絶してしまった。


彼氏なのに、唇に触れて欲しくないと思ってしまったのは、美姫の心には峯岸がいるからだった。


唇に残る峯岸との熱く甘いキスを、上書きされたくなかった。


「ごめんなさい…うつすといけないと思って」


嘘の言い訳を言える自分に、ひどい女だと自分自身を罵る。


連絡がとれない彼女を心配し、駆けつけてくれた浜田。
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