ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
それなのに、悪いことをしたと思えても、嬉しいと思えない。
ここにいるのが峯岸だったら、嬉しくて抱きついていただろう。
もう、無理だった。
無意識に浜田のキスを拒絶した事で、美姫は決意することができた。
「今、コーヒーいれますね」
「あっ、ありがとう」
台所に立つ美姫の背後を通るために、狭い廊下を歩きだした浜田が美姫の背後で足を止めた。
ケトルに水を入れ火をかけようとした美姫が、背後に立つ浜田に振り返えるが視線が重ならない。
浜田の視線は、ずっと美姫の首筋辺りをジッと見ている。
その視線に、そこは峯岸に強く吸われた痕が残っている場所だ気づき、咄嗟に手のひらで隠したがすでに遅かった。
美姫の行動が、決定的なものにしたのだ。
虫に刺されたとか言えない状況を自ら作った。
ごまかせない…
浜田の表情が次第に険しくなり、廊下にビニール袋ごと中身が落ちた音がしたと同時に、美姫の肩口を強く掴んで美姫の体を何度も揺する男に、美姫は恐怖を感じた。
普段、温厚で優しい浜田…が怖い。
その彼を、こんなふうにしたのは美姫なのだ。
「峯岸だな‥あいつと寝たのか?どうなんだよ」