【11/7改訂版】お願いダーリン！ ～大好きな上司に片思い～

千香は大きく息を吐くと、もう一度外を見た。

（え……？）

ガラスを挟んですぐ前の大通りを歩く一人の男性と女性。

（町田主任……）

心臓が締め付けられて、目を逸らすことも、動くこともできなかった。

不意に周りを見渡した、町田の視線が千香を捉えた。
驚いた町田の顔を見てようやく千香は目線を店の中に戻した。

（落ち着いて。わかっていたじゃない。私に構っていたのは気まぐれだって。町田主任は誰にでも……）
自分に言い聞かすようにギュッと目を瞑ると、テーブルにパタッと涙が落ちた。

（こんな気持ちになるなら、もっと素直になればよかった……）

ポタポタと流れ落ちる涙を止める術が解らず、千香はただ俯いて嗚咽が漏れないように唇を噛んだ。