神木部長、婚姻届を受理してください!
「あまりにも嬉しかったので、あと少しだけこのままがいいです」
両腕に、もっと力を込める。
もともと、すごく大好きだったのに、もっともっと好きになっている私の聡介さんへの気持ち。
「はあ、参った。〝仕事に戻りなさい〟って突き放したいところなんだけど、つい沙耶だと甘やかしたくなる」
ダメだな、と笑う聡介さんの両腕も私のことをもっと抱き寄せた。
「嘘みたい」
「ん? 何が?」
「聡介さんと、こうして好き同士になって、付き合って、デートしたりしてることと、結婚すること。全部が、嘘みたいで」
初めは、ずっと一人で追いかけてきたのに。
いつになっても振り返ってはくれない聡介さんの事をただ前だけ見て追いかけてきたのに。
本当に、嘘みたいに嬉しい。
「聡介さん」
「ん?」
「大好き」
「うん」
いつもと変わらず、優しいトーンで返事をして頷く彼の耳先が少しだけ赤い。
大人で、優しくて、余裕があって。だけど、時々、子供で、心配性な彼。どんな彼を見たって、私の気持ちは揺らぐどころか大きくなり続けている。
本当に、ずっと、ずっと、大好きで追いかけてきた人。
尊敬していて、誰よりも大好きな彼に、ようやく手が届いた。
好き。大好き。
だけど、それよりももっと。
「世界で一番に愛してます」
*おわり*
