神木部長、婚姻届を受理してください!
「諦めるしかないかな、とは思ってるんですけど……少し、時間がかかりそうです」
心配そうな表情をしてそう発した香織さん。私は、その問いに答えると、ストローを口元に運び、オレンジジュースを喉へ流し込んだ。
「そう……流石に、本人の口から〝困ってる〟なんて聞いちゃったらそうなるわよね。でも、沙耶ちゃんはこんなに部長のことが好きなのに……」
更に下がっていく香織さんの眉尻。悲しそうな表情をしている香織さんの目線がテーブルの上からゆっくりと上がり、私の視線とぶつかった。
「でも、沙耶ちゃん。諦めるのは、神木部長にちゃんと気持ちを伝えてからでもいいんじゃないかな」
「え?」
「だって、まだ部長には勘違いされたままなんでしょ? 沙耶ちゃんの気持ちが冗談や悪ふざけだって。このまま諦めるなんて、納得いかないじゃない。諦めるにしても、今ある沙耶ちゃんの気持ちも分かってもらえずに終わるなんて、悲しすぎる。それに、しっかり分かってもらった上で諦める方が、スッキリするでしょ?」
まあ、これは個人的な意見なんだけど。と付け足した香織さん。私は、確かに香織さんの口から発せられた言葉たちには同感だった。