神木部長、婚姻届を受理してください!
「すみません。あと、ポテトフライひとつお願いします」
「はい。かしこまりました。以上でよろしいでしょうか?」
「はい。ひとまず、以上で」
「かしこまりました。失礼致します」
驚いたことに、部長の口から〝ポテトフライ〟が注文された。注文を躊躇っていた私からは、もちろん何も言っていない。
オレンジジュースのことといい、ポテトフライのことといい。ひょっとして、神木部長はエスパーでも使えるのだろうか……?
「そんなにポテトフライ食べたいなら、注文したら素直に良かっただろ」
エスパーだなんて、馬鹿なことを考えていた私に、神木部長の笑い声が混じったような言葉が降ってきた。
「どうして、私がポテトフライを食べたいって思ってることが分かったんですか⁉︎」
身を乗り出すようにして問うと、部長はまた少し笑って口を開く。そして、テーブルの上に置かれたメニューのに視線を向けた。
「こうやって、ずっと視線がポテトフライに向いてたから」
食べたいんだろうなって思って、と付け足して視線を私に戻す。
ポテトフライが食べたいけれど、それが言えなくて。でも、結局、視線が追ってしまっていてバレてしまうなんて、なんて恥ずかしいオチだ。