今年の夏もキミを想う…。


「ひっ!?」

「きゃっ!!」


驚いて咄嗟に身を引いた和果子に、柚花がひしっとしがみつく。

えへへと悪びれもせずに笑って見せた高知に、和果子はキッと鋭い視線を投げた。


「先輩、悪趣味ですよ」


怒れる和果子にゴクッとつばを飲んだ宮崎とは対照的に、高知は「えへへ、ごめんごめん」と軽い調子で謝罪し、懐中電灯を手渡している。


「じゃあ気をつけてね、二人共。安全は確認済みだけど、でも何かあったら呼んでね!大きな声で呼んでね!!」


遠くなっていく二つの背中に大きな声をかける高知を、宮崎は哀れみのこもった目で見つめる。

和果子を怒らせたらどうなるか、この人はいくつになっても学習しない。

そのTシャツに描かれている鳥のイラストが、暗闇の中で淡く発光しているのを眺めながら、どうか自分には被害が及ばないようにと願うのが、今の宮崎にできる唯一のことだった。





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