今年の夏もキミを想う…。
わざわざ聞かずとも、柚花の想い人には何となく予想がついているというのに。
和果子の手にした懐中電灯の丸い明かりが、二人の足元を照らしている。
薄気味悪い階段に響くのは、ゆっくりとのぼっていく二つの足音だけ。
ついさっきまで後ろから何やら高知の叫ぶ声が聞こえていたが、あえてスルーしてのぼり続けていた。
どうせ悲鳴を上げるなら、柚花のようにもう少し可愛らしく悲鳴を上げれば良かったと、どうしようもない事を後悔しながら足を進めていくと、上の方に高知が話していた鳥居が見えてきた。
「和果子さんは……その、いるんですか?好きな人」
柚花のか細い声が聞こえたのは、階段をのぼり終わった和果子が、今まさに鳥居をくぐろうとした瞬間だった。
振り返れば、まだ階段にいる柚花が少し低い位置から遠慮がちに和果子を見上げている。
「まあ……一応、ね」
何だか改めて口にするのは照れくさくて、和果子は恥ずかしそうに笑って答える。
そのあとは、何も言わずに柚花が隣に並んだので、二人で一緒に鳥居をくぐって先に進む。