今年の夏もキミを想う…。


――「二人乗りしたら、ますます時間がかかる……」

「しょうがないでしょ。私の自転車、さっき見たらタイヤがパンクしていたんだから」


本当はまんざらでもない気持ちを押し隠して、顔だけは嫌そうに、宮崎はブツクサと文句を垂れる。

そんな宮崎の真意を見抜けぬまま、彼女は自転車の後ろにまたがって、宮崎の腰の辺りに手を伸ばした。

キュッと両の手が絡み合い、体がほんの微かに触れ合うと、宮崎の心臓がドキンっと跳ねる。


「安全運転でお願いね。途中で振り落としたりしたら、ヒロインの秘密だけじゃなくて、ラストで主人公がどうなるかも暴露しちゃうから」

「わかってるよ」


恐ろしい脅し文句に表情を引き締めて、宮崎は慎重にペダルを漕ぎ出す。

二人分の体重が乗った自転車は中々前に進まないが、根気よくペダルを漕ぎ続けてようやくスピードに乗り始める。


「あー、風が気持ちいい」


後ろから聞こえる独り言じみた彼女の声を聞きながら、宮崎はひたすらペダルを漕ぐ。
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