今年の夏もキミを想う…。


「桜のブランコ……まだ、あるのかな」


ハガキをポストに出して、無事にお使いを終えた宮崎は、自転車にまたがったまま何となしに呟いた。

村の外れも外れの方にある桜の古木は、いつからそこにあるのか、誰がそこに植えたのかも誰も知らない、けれど昔からそこにある大木で、これまた誰が取り付けたのか、木の板とロープだけで作られた簡素なブランコが設置されていた。

それを見つけてきたのは彼女で、以来何度か足を運んだことはあったが、距離が距離であるため、そう頻繁に行けるような場所でもなかった。

それを唐突に思い出して、宮崎はふと後ろを振り返る。

進行方向に真っ直ぐ進めば家につくが、向きを変えて逆に進めば、桜の大木がある場所へと続いていく。

見上げれば、太陽は真上にあって、まだ勢力が衰える様子もなく、ジリジリと宮崎を照らしている。


「どうせ暇だしな」


それでも宮崎は、くるりと自転車の向きを変えると、家とは反対の方向に向かってペダルを漕ぎ出した。
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