俺様ドクターに捕獲されました
昔だったら、彼が落ち込んでいる姿なんて想像できなかった。でも今は、彼のその情の深さをよく知っている。
だから、行かなきゃ。彼は多分、あそこにいる。
「PHSで居場所聞いてあげようか?」
「大丈夫です。行ってきます」
「さすが、彼女。じゃ、ご帰宅される頃に呼ぶから」
手を振る菅谷先生にお辞儀をして、旧棟の階段を上り、屋上へ向かう。普段、人がこない場所だからか、電灯が外されていて電気が点かない。
もう陽も出ているのに、光が入らず薄暗いその場所はなんのなく不気味だ。正直、とても怖いが、この先に彼がいるという確信が私にはある。
昔、どうしてだかは忘れたけど、病院の中で隠れんぼをしたことがあった。そのとき私が隠れたのが、この先の屋上に続く踊り場だ。
待てど暮らせど見つけてもらえなくて、だんだんあたりが暗くなってきて、やたらヒューヒューなる風の音が怖くてたまらなかった。
置いていかれたのではないかという不安と、恐怖で動けなくなった私を見つけてくれたのは、彼だった。
必死で探してくれたのか、息切れした彼が半べその私をぎゅうっと抱きしめてくれた。そのぬくもりに安心して、私はみっともないほどに泣きじゃくってしまったのだ。
そんな私を、彼はただ力強く抱きしめてくれて、ずっと頭をなでてくれていた。
まあ、あとであんなわかりにくいところに隠れるなってこっぴどく怒られましたけどね。