俺様ドクターに捕獲されました
「おばちゃん、こないだの女子トーク楽しかったね。私、優ちゃんのこと見事に操縦してみせるからね。天国から見守ってて。おばちゃんも、旦那さんからまた魔法の言葉、もらえるといいね。優ちゃんにケチなんて言われて張りきってるかもよ。あと、あのときさ……」
おばちゃんの顔を眺めながら、ひとりでおばちゃんに話しかける。おばちゃんが笑っているような気がして、家族が到着するまで、私はそうやって思い出話を話し続けていた。
* * *
最期の処置も終わり、私は彼を探しに医局に向かっていた。その途中で、当直の菅谷先生に会い足を止める。
「あ、お疲れ、里衣子ちゃん。優に、死亡診断書は書いとくって伝えてくれる?」
「え? 優ちゃん、医局にいないんですか?」
「うん、一回も来てないよ。俺は、里衣子ちゃんといるのかと思ってた」
あの居酒屋の一件以来、私を名前で呼ぶようになった菅谷先生の言葉に首を傾げる。
医局に行くって言ってたのに、行ってないの?
顎に手を当てて考え込む私に、菅谷先生は苦笑いをして私の背中を軽く叩いた。
「あいつって、ああ見えてものすごく情が深いんだよね。自分の担当している患者が亡くなると、すごく落ち込むんだ。プライドが高いから、そういうところはあんまり、見せないけどね。柴田さんは、親しい人だったから余計なんじゃないかな。そういうときは、よく消えるんだ」