俺様ドクターに捕獲されました
「そうだよ。今日だって、香水つけてるし。そんなのつけてたことないのに。スーツ着てるし、あの人に会うからオシャレしたんじゃないの」
また泣いてしまった私の涙を、彼が苦笑いしながら親指で拭った。
「バカ、そんなのお前とデートするからに決まってるだろ。今日、あの女の誘いに……というよりは院長の誘いにのったのは、お前にプロポーズする前に全部クリアにしておきたかったからだ。さっさと終わらせて、お前のところに行くつもりだった」
「え?」
「たしかにあの女と結婚すれば支援してやるとは言われてだけどな、そんなもん俺には必要ない。お前、俺のこと見くびりすぎ」
彼がポケットから名刺入れを出し、中身をテーブルの上にぶちまけた。バラバラと音をたてて広がる名刺を呆然と見つめていると、彼が不敵な笑みを浮かべる。
「これ、全部ヘッドハンティングかけてきた病院のお偉いさんの名刺。俺は優秀だからな、別に今の大学病院にこだわらなくても引く手あまたなんだ。ずっと忙しかったのは、恩を売りまくって交渉をやりやすくするため。おかげで、病院を立て直す見通しがたった。今、働いてる病院はやめる。もうあの女に会うこともないから、安心しろ」
ポンポンと頭をなでられて、驚きながらもとりあえずうなずく。でも、そこじゃない。
今、この人……プロポーズって……。
唖然としている私に気づいた彼が、ひとつ深呼吸をして私に向き直る。