俺様ドクターに捕獲されました
彼と玄関を出ようとすると、どこに行っていたのかお兄ちゃんが戻ってきた。手を繋いでいる私たちを見て、ニヤッと笑う。
「まとまったみたいだな。貸し、ひとつだな。感謝しろよ、優」
「……ああ、助かった。りいのこと、もらうからな」
「はいはい、どうぞ。ま、優のめちゃくちゃ焦った顔見れたから貸しもなかってことにしてやるよ。約束、守ってたみたいだしな」
「当たり前だ。ここまで来て、言いがかりつけて邪魔されるなんて冗談じゃないからな。俺は、我慢強いんだよ」
「それは知ってる。最後に嫌がらせしてやろうかと思ったけど、そこまでされたら認めざるおえないな」
私には彼しかいない、なんて言っていたくせに、お兄ちゃんはわざとらしく肩をすくめる。まあ、それでこそ我が兄だ。
「ま、優が義弟になるのもなかなか面白いしな。末永くよろしくな、弟よ」
ニヤニヤしながら彼の顔を覗き込むお兄ちゃんに、彼はものすごく嫌そうな顔をして私のことを引き寄せた。
「お前みたいに性格の悪い義兄に対抗できるのは俺くらいだろうな。そう思わないと、やってられん。行くぞ、りい」
「うん。お兄ちゃん、ありがとう。お騒がせしました」
「な? 俺の言った通りだったろ。悩むだけ無駄だったな。優は里衣子バカなんだから。お前のこと手放すわけないんだよ。……幸せになれよ。泣かされたら、俺が優のこと泣かせてやる」
「泣かねぇし、泣かさねぇよ」
ずっと私を見守ってくれていたふたりの暴君。睨み合うふたりに挟まれて、昔となにも変わらないその光景に、私は笑みを零した。