俺様ドクターに捕獲されました


「うちの病院で、アロマテラピーを取り入れようと思ってるんだ。俺が担当している患者に話したら、ぜひ受けてみたいっていう人が何人かいたから。明日、連れて行くって話したら楽しみにしてるってさ」


え、ちょっと。それってもう、私に拒否権はないじゃない。私の予定も聞かずに一方的に決めちゃうところは、昔と全然変わってない。


「ちょっと、そんなの勝手に決められても。健康な人と病気の人にするのじゃ、訳が違うんだよ」

「だから、りいに頼んでるんだろ。看護師免許を持ってるし、メディカルアロマも勉強してるって中野の嫁に聞いたぞ」


頼むっていう態度じゃないんですけど。たしかに、私はそういう勉強もしている。いつか、そういう仕事もできたらと思っていた。


だけどーー。


「でも、私……」

「なんか用事あるのか?」


勝手に予定を決めておいて、今さらそれを聞きますか。買い物に行きたいとは思っていたけど、それは別に明日じゃなくても構わない。


私が迷うのは、そういうことではなくて……。


でも、その理由を彼に伝えることはできない。


それは、ちっぽけな私のプライド。彼に、どうしようもない劣等感を抱えた自分を知られたくなかった。

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