俺様ドクターに捕獲されました


いやいや、そんなことない。柔です。ヤワヤワのヘニョヘニョだよ。だいたい、四六時中そばにいてくれるわけではないくせにそんなの無責任だ。


いや、四六時中そばにいられたら、それはそれで嫌だけれども。


内心では、ブーブー言いながら彼に肩を抱かれて様々な場所に挨拶に回る。


だが、どこに行っても好奇と羨望の眼差しにさらされて、肝心の患者さんの元へ辿り着く頃にはぐったりと疲れ切ってしまっていた。


彼に紹介された、私の担当する患者さんは、五名。全員女性で、うち四名はガン患者だ。


そのなかの一名は術後で、抗ガン剤治療をしている患者さんが二名。みんな、私に対して好意的だった。


それに少し安堵して、最後の患者さんの元へ挨拶に向かう。


「この患者は、今までの人たちとは違う。膵臓ガンの末期患者だ。全身に転移があって、いつどうなってもおかしくない」


「ターミナルってこと?」


「そうだ。そして、お前に施術を受けるのを一番楽しみにしていて、一番それを必要としている人だ」


ターミナルとは、終末期のことだ。余命わずになってしまった人への治療を終末期医療、ターミナルケアと呼び、身体的ケアはもちろん、それ以上に精神的ケアが重要になってくる。

延命治療は一切せず、QOL(クオリティオブライフ)、生活の質をあげ、その人らしい最期を迎えられるよう援助していく。

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