俺様ドクターに捕獲されました


心に大きく作用するアロマセラピーは、精神的ケアに重きを置くターミナルケアの大きなサポートになるだろう。


課せられた責任の重さに、ぐっと背筋が伸びる。


「ここだ。柴田さん、入りますね」


個室の前で立ち止まった彼が、開いている扉をノックして中に声をかける。


「どうぞ」という返答を聞いてから、部屋の中に入りカーテンを開けてベッドサイドに近づいて行った。


「こんにちは、柴田さん。体調はどう?」

「まあまあかしら。でも、やっぱり食欲はないの」


ベッドの横に座り込み、目線を合わせて話す彼に、少し状態を起こし横になっている女性は弱々しい笑顔を浮かべた。


痩せ細った顔に比べて、身体が大きく全体的に肌が黄色い。ガンによって胆管が塞がり、黄疸が出ているのだ。


リンパ節にも転移があるのだろう。全身にむくみが出ている。


かなり辛いだろうと思っていると、立ちすくんでいる私に気がついた女性が、驚いたように目を見開きパチパチと瞬きを繰り返した。


それから、うれしそうに目を輝かせて満面の笑顔になる。その明るい笑顔には、私も見覚えがあった。


「……里衣子ちゃん? 里衣子ちゃんよね。やだ、優くん。マッサージやってくれる人って、里衣子ちゃんだったの?」

「そう、おばちゃんの驚く顔が見たくてさ。作戦成功だな」

< 67 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop