俺様ドクターに捕獲されました
心に大きく作用するアロマセラピーは、精神的ケアに重きを置くターミナルケアの大きなサポートになるだろう。
課せられた責任の重さに、ぐっと背筋が伸びる。
「ここだ。柴田さん、入りますね」
個室の前で立ち止まった彼が、開いている扉をノックして中に声をかける。
「どうぞ」という返答を聞いてから、部屋の中に入りカーテンを開けてベッドサイドに近づいて行った。
「こんにちは、柴田さん。体調はどう?」
「まあまあかしら。でも、やっぱり食欲はないの」
ベッドの横に座り込み、目線を合わせて話す彼に、少し状態を起こし横になっている女性は弱々しい笑顔を浮かべた。
痩せ細った顔に比べて、身体が大きく全体的に肌が黄色い。ガンによって胆管が塞がり、黄疸が出ているのだ。
リンパ節にも転移があるのだろう。全身にむくみが出ている。
かなり辛いだろうと思っていると、立ちすくんでいる私に気がついた女性が、驚いたように目を見開きパチパチと瞬きを繰り返した。
それから、うれしそうに目を輝かせて満面の笑顔になる。その明るい笑顔には、私も見覚えがあった。
「……里衣子ちゃん? 里衣子ちゃんよね。やだ、優くん。マッサージやってくれる人って、里衣子ちゃんだったの?」
「そう、おばちゃんの驚く顔が見たくてさ。作戦成功だな」