俺様ドクターに捕獲されました


「そういえば、優くんは昔からイタズラ好きだったわね。何度驚かされて心臓が止まりそうになったことか」

「大げさだな。そうなっても大丈夫なように医者になっから大丈夫だよ。ほら、りいもそんなところに立ってないでこっちに来いよ」

「そうよ。こっちに来て、ちゃんと顔を見せて」


昔と変わらない、優しい笑顔。それに誘われて、フラフラとベッドに近づくと、その人はニコニコしながら私の手を握った。


「里衣子ちゃん、お正月ぶりね。いやぁ、また綺麗になったんじゃない?」

「本当だね。私も、びっくりしちゃった。優ちゃん、なにも教えてくれないんだもん」


私も彼の隣にしゃがんで微笑む。懐かしそうに私を見つめるこの人は、うちの近所にある柴田屋という駄菓子屋さんの奥さんだ。


早くに旦那さんを亡くし、おばちゃんひとりでそのお店を切り盛りしていたその店に、小さい頃は毎日のように通っていた。


近所の子どもはみんなおばちゃんのことが大好きで、おばちゃんも自分の子どものように私たちをかわいがってくれた。


いまだに地元に戻ってくると、みんなおばちゃんのところに遊びに行くほどだ。


今年のお正月に会ったときは元気そうだったのに、半年たらずで変わってしまったその姿に衝撃を受ける。


「優くんは、大人になっても変わらないねぇ。里衣子ちゃん、よく泣かされてたけど、今は大丈夫かい?」


今も相変わらず泣かされてます、と言おうとすると、隣にいる彼に手をぎゅうっと握られた。


「そんなことするわけないでしょ。いくつになったと思ってるの。俺、もう三十一だよ? 今は、泣かせることもなく大切にしてるよ。な、りい」


余計なこと言うんじゃない、と笑顔で圧力をかけられて、仕方なくうなずいた私におばちゃんはクスクスと笑い声をあげた。
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