俺様ドクターに捕獲されました
「覗くな、口説くな。りいに手出したら殺すぞ」
「うわ、目がマジ。とりあえず、そっちは善処するけどさ。仕事はぜひお願いしたいな。あ、俺、非常勤医の菅谷亮太(すがやりょうた)です。専門は脳外。優とは大学の同期で今も同じ病院で働いてるんだ。よろしくね、りいちゃん」
「あ、天野、里衣子、です」
私の顔を覗こうとする菅谷先生に、覗かせまいと動き回る彼に振り回されながらなんとか挨拶する。
ていうか、これ、いったいいつまで続くの?
「りいって呼ぶな。そう呼んでいいのは、俺だけだから。名前もダメ。苗字で呼べ」
「ケチくさっ。わかったよ、天野さんて呼べばいいんだろ。それより、仕事の話しにきたんだよ。三病棟の伊藤さんのことなんだけど……」
仕事の話が始まって、やっと彼の腕の中から解放される。ほっとしながら少し距離をとる。なんかもう、本当に疲れた……。
真面目な顔で話しているふたりを見つめていると、後ろから足音が近づいてきていることに気がついた。
振り返ると、こちらに向かって白衣を来た女性が歩いてくるところだった。
緩くウェーブした髪を無造作にひとつにまとめているその人は、かなり華やかな美人さんだ。
大きな瞳はじっと私のことを見ており、その目には明らかな敵意が滲んでいる。
その人は、私の横を通り過ぎる瞬間に歩調を緩め、ジロリと横目で私を睨んだ。