俺様ドクターに捕獲されました


「え?」


私の頰を手の甲でなでた彼が、顔を覗き込んでくる。すべてを見透かすような真っ黒な瞳が、私の瞳の奥底を見つめている。


「昨日からずっと、迷子みたいな顔してる。正直、俺のツボを押しまくりで理性を保つのが大変だ」

「は? ゆ、優ちゃん。なに言ってるの?」

「無自覚か。りい、昨日この話をしてから、ずっと俺にすがるような目を向けてんだよ。なにがそんな不安なんだ? 助けてやるから、話してみろよ」


頬から肩のラインをなでた手が、私の手を包み込む。自分の弱さを晒すことが怖くて、彼の目が見れない。


それに、きっと彼にはわかってもらえない。いつも自身に満ち溢れていて、自分を貫き通す強さを持っている彼に、私の気持ちなんてわかるはずがない。


「……優ちゃんには、わからないよ」


気がついたら、そう口にしていた。額をくっつけるようにして私を見つめていた彼の目が大きく見開かれる。


ああ、私、最低だ。こんなの、ただの八つ当たりじゃないか。どうしようもない自己嫌悪に襲われて、彼から顔を背ける。


もう、やだ。今すぐここから消えてしまいたい。


「りい、こっち向け」

「い、いや」


そんな自分が情けなくて、恥ずかしくて、涙が滲んでくる。それを見られたくなくて、必死に顔を背ける私の顎を彼の手が掴んだ。

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