俺様ドクターに捕獲されました
「いいから、俺を見ろ」
無理やり顔を戻されて、真剣な顔をした彼と真正面から向き合う。
「俺は、知りたい。りいがなにを考えて、なにを不安がっているのか。離れてた十年のあいだにどんな人生を歩んでいたのか。まあ、そうは言っても別の人間だからな。そりゃ、全部は分かってやれないかもしれない。だけど、俺はずっとりいのヒーローだったはずだけど。忘れた?」
そうだ。私が泣いていたり困っていたりすると、助けてくれるのはいつもこの人だった。
どうしようなく俺様で、暴君で……私の言うことなんてひとつも聞いてくれないけれど、たしかにこの人は俺のヒーローだった。
「……ひどいこと言ったのに、怒ってないの?」
「怒ってない。昔の俺だったら、怒り狂ってたかもな。俺も大人になったからな、小指の先くらいは心が広くなった。りいがどうしても言いたくないっていうなら、今は我慢してやる」
その上からな言い方がいかにも彼らしい。
それに、傍若無人を絵に描いたようなこの人から我慢するって言葉が出るなんて……。
「だから、話せよ。大概のことは吹き飛ばしてやる」
「えっ! 今、我慢するって言ったばかりだよ」
「するよ。りいがどうしても、どうしても嫌ならな。ほら、話せ。嫌なら我慢してやるけど、話せるだろ。早く話せ」
ああ、やっぱり彼は彼だった。我慢する気ないじゃん。でも、なぜかそれにとても安心する。
ポロリとこぼれた涙を、彼が舌で舐めとった。