俺様ドクターに捕獲されました


テキパキと医師の指示に従って動く先輩看護師をよそに、なにもできずに立ちすくむ自分。


さらに、対応にあたっていた外科医に「なにもできないなら外に出てろ! この役立つ!」と怒鳴られ、余計にパニックになってしまった。


怒鳴られても、仕方がない。命の現場には、新人もベテランもないのだから。たしかに私は、なにもできない役立つだった。


先輩には、「最初からなにもかもできる人はいないから」と慰められたが、その出来事は私に大きなトラウマを残した。


なんの役にも立たない、なにも救えない。なんて、自分は無力な存在なのか。


新人看護師なら、誰もが通る道だったのかもしれない。事実、同じように悩む同期は多かった。


でも、半年、一年と経験を積むうちに皆その山を乗り越えて成長していく。


だけど私は、いつまで経ってもそれを乗り越えられない。


自分のせいで、救える命を助けられないかもしれない。それがどうしても怖くて、私は月日が経つごとに仕事に行くことを辛く感じるようになった。


働き始めて一年が過ぎた頃には、私はストレスから不眠症に悩まされるようになり、食欲もなくなり体重が十キロも減ってしまっていた。


そんな私の救いが、アロマテラピーだった。


私が働いていた病院では、日常のケアにアロマテラピーを取り入れていて、私のマッサージはなかなか評判がよかった。


なにより、その香りが疲れ切っていた私の心を助けてくれた。

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