いつか君と見たサクラはどこまでも
女医の先生はニコニコとしていて、でもどこか真剣な表情をしていた。
「翔くん、調子はどうですか?」
その声も優しかったけど、どこか真面目な感じがあった。
「特に変わりないです」
翔はニコッと笑ってみせた。あまり見たことのない、ちゃんとした笑顔だった。
「翔くんはまだ大丈夫みたいですね。あと一年くらいは心配ないと思われます。ですけど、衛生には気をつけてくださいね。菌が入ってしまえば大変ですから」
「はい。ありがとうございます」
母さんはほっと息をついた。
俺達も一安心だ。翔もかなり嬉しそうに笑っていた。
「俺、中学生になれるんだ!」
嬉しそうに雑誌のリュックを見つめていた。
「あ、このリュック、学校で使うから。よろしく」
またニヤリと笑って俺の方を見た。本当にずるいな。だけどやっぱり元気でなりよりだ。
もう空は暗くなって、月が顔を出していた。
それはいつもよりも美しく見えた。
「翔の様子は私が見とくから、あなた達は帰って大丈夫よ」
母さんはこれまでとは違う、とても優しい笑顔で微笑んだ。翔のことがよっぽど嬉しかったのだろう。
「うん、じゃまたね」
手を振ると、小さく振り返してくれた。本当に小さかったけど、すごく嬉しかった。
冬の夜はとても静かで、どこか寂しい。
そんな静寂な冬の夜を二人で歩くのは、なんだか不思議な気分だった。
「寒いね」
マフラーと手袋をした桜井が言う。結構防寒対策してるじゃないか。
「そうだね」
だけど、そこは突っ込まずにそれだけ返した。
「何?なんからしくないんだけど」
「はい?」
桜井が怒ってるのか怒っていないのかわからないような顔で言ってくる。らしくないってどういうこと。
「いつもならさ、私達キャーキャーワーワー言ってるのに、今日なんか静かだなって。そう思ったから」
確かにいつもそうだった。いつも何か言い合いになって騒がしいのに、今日はやけに静かだ。
「たまにはいいんじゃないかな。俺達らしくないけど」
「そうだね」
桜井も同じく、突っ込んでくることはなかった。
静かな街に月の明かりが照らされて、冬の夜を彩っている。それは何よりも美しい。
桜井もそう思っているかはわからないけど、ただ美しいのは事実だった。
「月が、綺麗だね」
この言葉の意味を知るのはまだ先のことだった。
「翔くん、調子はどうですか?」
その声も優しかったけど、どこか真面目な感じがあった。
「特に変わりないです」
翔はニコッと笑ってみせた。あまり見たことのない、ちゃんとした笑顔だった。
「翔くんはまだ大丈夫みたいですね。あと一年くらいは心配ないと思われます。ですけど、衛生には気をつけてくださいね。菌が入ってしまえば大変ですから」
「はい。ありがとうございます」
母さんはほっと息をついた。
俺達も一安心だ。翔もかなり嬉しそうに笑っていた。
「俺、中学生になれるんだ!」
嬉しそうに雑誌のリュックを見つめていた。
「あ、このリュック、学校で使うから。よろしく」
またニヤリと笑って俺の方を見た。本当にずるいな。だけどやっぱり元気でなりよりだ。
もう空は暗くなって、月が顔を出していた。
それはいつもよりも美しく見えた。
「翔の様子は私が見とくから、あなた達は帰って大丈夫よ」
母さんはこれまでとは違う、とても優しい笑顔で微笑んだ。翔のことがよっぽど嬉しかったのだろう。
「うん、じゃまたね」
手を振ると、小さく振り返してくれた。本当に小さかったけど、すごく嬉しかった。
冬の夜はとても静かで、どこか寂しい。
そんな静寂な冬の夜を二人で歩くのは、なんだか不思議な気分だった。
「寒いね」
マフラーと手袋をした桜井が言う。結構防寒対策してるじゃないか。
「そうだね」
だけど、そこは突っ込まずにそれだけ返した。
「何?なんからしくないんだけど」
「はい?」
桜井が怒ってるのか怒っていないのかわからないような顔で言ってくる。らしくないってどういうこと。
「いつもならさ、私達キャーキャーワーワー言ってるのに、今日なんか静かだなって。そう思ったから」
確かにいつもそうだった。いつも何か言い合いになって騒がしいのに、今日はやけに静かだ。
「たまにはいいんじゃないかな。俺達らしくないけど」
「そうだね」
桜井も同じく、突っ込んでくることはなかった。
静かな街に月の明かりが照らされて、冬の夜を彩っている。それは何よりも美しい。
桜井もそう思っているかはわからないけど、ただ美しいのは事実だった。
「月が、綺麗だね」
この言葉の意味を知るのはまだ先のことだった。