空高く、舞い上がれっ。
「試合どうだった?」

ガコンッとジュースが落ちる。

「ん……勝ったよ」

少し間を開けてから、二回戦までは……と、付け足す。
輝空くんは何も言わずに向かい合わせになって、自動販売機に寄りかかりプシュッと蓋を開けた。

「勝負は何があるかわからないよ」

炭酸のジュースに一口も口を付けずに輝空くんは話す。

「勝つやつがいれば、負けるやつだっている。でも、勝ちだけがすべてじゃない」

なんで負けたと思う?
輝空くんの目は真剣にわたしを見つめていた。

「最初からびびってたのかな……わたし。
動揺して跳んで、焦って無駄に打って……。わたしらしくなかった」

悪いところをあげていくと、きりがない現実にわたしは下を向く。

「悔しい?」

「悔しい」

力強く答えると、輝空くんはそっか、と優しい目を向ける。

「そーゆー気持ちがあるなら大丈夫だな。
勝ちから学ぶものより負けから学ぶものの方がデカいんだよ」

俺、今すげー良いこと言った!?と、笑いを取ろうとする輝空くん。
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