契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
(もしかしたら、すぐ必要なものかもしれないし。連絡してみて、不要ならそれはそれでいいもんね)

 忍へ連絡してみることにした鈴音は、電話にしようか迷った末にメールを入れた。
 メールなら都合のいいときに確認して、なにかあれば反応があるだろうと思った。

 すると、思いがけず早々に着信がきた。鈴音は吃驚し、慌てて電話に出る。

「もしも……」
『鈴音! どこにあった!? 探していたんだ!』

 鈴音の応答を遮る勢いで、忍が珍しく動揺した声を出す。
 鈴音は思いがけない反応に戸惑い、目を瞬かせる。

「えっ。あ、ベッドの下に……」
『ベッドの下? そうか。昨日は寝室にカバンを持ち込んだから……。鈴音、悪いがそれを今から届けてもらうことは可能か?』

 忍が矢継ぎ早に言葉を並べるところをみれば、相当焦っていたようだと察する。
 鈴音は少しでも早く届けられるようにと携帯を肩に挟め、掃除機を片付けながら返事をした。

「はい。大丈夫です」

 今や、鈴音は忍には従順だ。

 以前は彼の要望を聞くたび、不安になったり反発心が出てきたりしたものだ。
 心持ちが変わった現れでもあるのに、それを当の本人はまったく気がついていない。

 忍に尽くすことが、自然と自分の意思になっていた。

 部屋にカバンを取りに行き、鏡の前で容姿をさっとチェックして玄関に向かう。

『恩に着る。なるべく早く欲しいから、タクシー拾って飛ばしてもらってくれ』

 もう出られる準備をしていると知らない忍が急かすように言う。
 鈴音は靴を履きながら頷いた。

「わかりました。すぐ向かいます」
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