契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
「す、すみません……。迎えに来ていただいて」
「そのほうが、効率が良かっただけだから」

あっさりとした返答に、鈴音は胸を撫で下ろす。
さっき、なにかあったらどうしようかと乗車を躊躇したが、杞憂だったと思ったのだ。

そうとわかっていても、それなりに緊張はする。
とはいえ、一般女子のようなドキドキした理由ではなく、まるで上司の車に乗るように感じているからだ。

あっという間に普段歩く道を通り過ぎ、見たことのない景色に変わる。
どこへ向かっているのかと尋ねる勇気もなく、黙って窓の外を眺めていた。

「悪いが、時間が勿体ないから単刀直入に言う」

忍は運転しながら、鈴音を見ることもせずに口にした。
鈴音は忍の整った横顔をチラリと見て、「はい」とひとこと返す。

会うのはこれで何度目かだが、動かぬまま彼の顔を見るのは初めてのこと。
鈴音は、おぼろげには記憶していたが、ここまで美しい顔立ちだったとは……と驚愕した。

凛々しい眉、高い鼻梁。切れ長の瞳は、どこかセクシーでつい目を奪われる。

(これで、肩書きも文句なしにいいのだから、本当に驚いちゃう)

信じられないくらいに揃った人の隣にいること自体が、鈴音は信じられない。
こんな相手が自分になにを頼もうとしているのか。

鈴音は想像もつかなくて、急に緊張してきてしまった。

すると、ちょうど信号で止まった拍子に、忍が鈴音を見据える。その瞳に、鈴音は身動きができなくなった。

「オレと結婚してほしい」

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