契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
「もしかして、星羅さんは柳多さんのお眼鏡にかなっていますか? それで蜜月関係になろうとでも?」

さらに突っ込んで言われたことが図星で、柳多は瞬きもせず固まった。
それから瞼を伏せ、口元を緩ませる。

「そう。彼女は……彼女の父である西城戸は、うちの株を多く持っている。愛娘を使って、うまく丸め込めればと思っていた」
「最終手段が忍さんとの結婚ですか」
「きみと未入籍にしておけば、どうとでも動けると思ったんだ……」

大株主を手中に収めれば、都合のいいように持っていける。

忍の意思を星羅越しに西城戸へ伝達し、自分たちの有利に進められるかもしれないと踏んでいた。

そのための結婚相手だと考えていた。
確かに鈴音が言うようにそれは最終手段ではあったが、柳多は本気だったし、忍も暗黙の了解を示していた――はずだった。

「でも彼は、きみと出会って変わってしまった。その変化に気づいて秘密裏に婚姻届けを差し止めた」

柳多は顔を背けて白状する。それに対し、鈴音は憤慨などしなかった。

「さっきの忍さんとの会話で、柳多さんも忍さんと目的は一緒なのだと察しました。だけど、その目的が達成できなくなりそうな今、向ける矛先は彼ではなく私ではないんですか」

冷静に問い、軽く眉を寄せ切望する。

「彼を……忍さんを、裏切るような真似はやめてください。あなたを兄と思って慕っている彼を傷つけないで」

鈴音は今日まで、嫌味を言われても敵意を向けられても、派手に感情を出すことはしなかった。
それは今もそうで、柳多の一存で婚姻届けが未提出なのだとわかっても取り乱して責め立てることもしない。

そんな鈴音が、忍を思って熱く潤んだ瞳を見せていた。

「忍がきみにそんなことを……?」

柳多は瞳を大きく揺らした。

男同士ということもあって、忍の口からそういう言葉を聞いたことなどない。
嫌われてはいないことくらいはわかっても、どう思われているかまでは知らないし、知ろうともしなかった。
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