清廉の聖女と革命の鐘
柔らかな泥濘は足を掬われやすいが、毎朝奉納舞のため山奥まで歩いているクリスティーナにとっては造作もなかった。
厳しい鍛錬によって積み上げてきた体力と身のこなしは並大抵の男とあまり変わりない。それとちょっとした護身術も彼女にとっては自信につながっていた。
クリスティーナは木々を縫うようにして、不規則に足を走らせた。
知り尽くした地形。頭を総動員して目的地への最短距離を思い出しながら走る。体はまだ痛むが数分前のあの時の身を裂くような痛みよりはましだった。
木々の合間から神殿の門である白い石盤がうっすらと目認できた。
行けるっ!
そう思った時だった_
「聖女さんって足速いんだねー!でもさ、その重そうな服だと動きにくいんじゃない?」
ばっと現れた黒い影。止まる間もなくクリスティーナは、彼女とほぼ同身長の少年と正面衝突してしまった。
「きゃっ!」
クリスティーナは目をぎゅっとつぶった。
吹き飛ぶかと思った身体は細身ながらしっかりとした腕によって包み込まれていた。
「聖女さんの捕獲完了!」