清廉の聖女と革命の鐘
それもそのはず。闇の化身のような形相のブルーノが、こちらに一直線に走ってきたのだから。普通の人間ならば恐ろしすぎて卒倒してたかもしれない、と彼女はどこか他人事のように分析した。
お互い唖然として指先一つ動かせなかった。
先に我に返ったクリスティーナは、未だに呆然とつっ立っている彼の右足のすねを思いっきり蹴った。
「_っ!?」
拘束が緩んだすきにクリスティーナは逃げ出す。
「あっ!待って!」
ミカが伸ばした手がクリスティーナの腕をかすめた。
_捕まるっ!
その時、クリスティーナの背後に誰かが割って入った。
「私たちの聖女様に触れないでいただきたい」
「ブルーノ!」
自分の忠実なる騎士を見て、クリスティーナは安堵してぞっとする。原因はブルーノから漂う冷気だ。
「ぶ、ブルーノ…。あの、大丈夫ですか?」
クリスティーナは恐る恐る問いかけた。
「何のことですか?大丈夫です私は正気ですから」
くるりとこちらに向ける表情ははいつもの爽やかな笑みだった。だが、目が氷のようだ。
「聖女様、ここは任せてください。あなたは早く神殿へ!」
こくりと頷いたクリスティーナは足に力を入れて再び走り出す。
「殺気を隠しもしないなんて、逆にいいねぇ。ぞくぞくするよ!」
「その減らず口もあと数分したら聞けなくしてあげますよ。聖女様に触れた部分を全て削ぎ落とすつもりなのでね」
「口は関係ないだろー!」
「聖女様と喋ったではありませんか」
「え…それだけで?」
「あたりまえです。さて、最初はどこから行きますか?やはりその汚らわしい腕からですか?」
「僕に聞くなしー!」