清廉の聖女と革命の鐘
パキッ、小枝を踏む音がかすかに聞こえた。
クリスティーナは背後を振り向いた。
_な、に?
「ブルーノ?」
いや、違う。彼なら隠れないで声をかけるはずだ。
一瞬にしてぴりりと肌を刺すような緊張感を孕んだ空気に、クリスティーナは必死にあたりに目を凝らし、耳を澄ませた。
「だれ…?」
なにかいる、知らず知らずのうちに喉を上下させたクリスティーナの視線の先_木々の陰から、彼女の声に応えるように人影が現れる。
それも、ひとつやふたつではない。木々の暗がりのむこうから次々と黒のマントに身を包んだ男たちが姿を現した。だが、フードはかぶっていなかった。
ざっと20、30はいるだろう。いや、身を潜めているだけでもっといるのかもしれない。
さっきの男たちの仲間だろうか。だけど、それならなぜ彼らは3人で行動していた?少数の方が敵に会ったときの危険度は増すはず。しかもここは外界からの干渉を良しとしない未知の島。そこで単独行動なんて自殺行為だ。
_なら、なぜ?
クリスティーナは思考を巡らせた。
そして、はたと思い出す。“奴ら”という存在。彼らがしきりに気にしていた者達だ。
この男たちを“奴ら”と仮に断定しても、おかしい。クリスティーナはじりっと包囲をせばめてくる男たちを見ながら呟いた。
「…ヴァイスブルグ帝国?」
ピクッと空気が変わったのがわかる。
やはり。彼らの風貌からして間違いなかった。そうなると、さらに疑問は深まる。
なぜ味方と一緒に行動しない?それ以前に、彼らはこの男たちを敵視しているようだった。いったいなぜ_と考えかけ、クリスティーナははっと頭を振った。
「…早く逃げないとっ」