清廉の聖女と革命の鐘

そうこうしているうちに、一気に距離をつめてきた男が、横合いから腕を伸ばしてくる。
迷っている場合ではなかった。
クリスティーナはすんでで身体を捻ってその手をかわした。直後、ぐんっと左腕が重くなる。

え?と見下ろすと幅広の袖を男が掴んでいた。

「きゃぁ!」
そのまま男の元に引きずられる。
無駄だと思いながらも足を踏みしめて抵抗する。なんとか振り払おうとして身を捩ったが、手首をとられ拘束される。

「大人しくしていれば危害は加えません」
その時、男が初めて喋った。丁寧な口調だったが、ドスの利いた声だった。

クリスティーナの体がピタリと止まる。
諦めたと判断したのか、拘束の手が少し緩んだ。だが、周りには他の仲間たちが集まり逃走は絶望的だった。

「このまま俺たちの指示に従ってもらいます」
クリスティーナの耳に男の息がかかる。クリスティーナは緊張で卒倒しそうになるのを懸命にこらえた。

_負けてはだめよ

クリスティーナは腹に力を込めた。
彼らと行動している間に、必ず隙はできるはず。隙を見つけたら、彼らの元から逃げれる可能性もゼロではなくなる。

しかし、その判断を誤っては最悪、命が危ない。だから、落ち着いて冷静にならなくては。
< 48 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop