結構な腕前で!
第十二章
 今日のお菓子をリュックに放り込んで、萌実は教室を出る。

「萌実。部活?」

「うん」

 佐弥子は、ふーん、と言いながらも、怪訝そうに萌実の姿を眺めている。

「茶道部って、思った以上にハードなのね」

 入学当初は普通の鞄だったが、今や機能性重視のリュックだ。

「部室までも結構慣れてきたし。ランニングがてら走っていくから、両手は空いてたほうがいいんだよね」

「うちの茶道部は、運動部のカテゴリートップよね」

「そうね。こんなんで茶道やってました、とか言えないわ」

 軽く屈伸し、じゃあね、と佐弥子に手を振って、萌実は教室を出た。
 校舎を出たところで、軽く走り出す。
 と、前に見知った後姿を見つけた。

---あれ、橘先輩……---

 見たところ一人だ。
 単体でいられるとどちらかわからない。
 どうしたもんか、と思っていると、不意に横の体育館舎から、大柄な影が飛び出した。

「橘先輩。ちょっと」

 呼び止めたのは、柔道着姿の偉丈夫だ。
 二人はその場でしばらく何かを話し込んでいる。

 少し離れているし、はるみだかはるかだかは、こちらに背を向けているので、挨拶するにはわざわざ立ち寄る感じになる。
 今お話し中だし、ということで、萌実はそのまま二人をやり過ごして先に部室に向かった。
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