結構な腕前で!
「まいったな……。俺、そんなに態度に出てるのか」

 いや、そうでなくて、と言いそうになり、萌実は危うく言葉を呑み込んだ。
 はるみに聞いたとかは、言わないほうがいいだろう。
 己の過失でばれたと思ってくれたほうがいい。

「まぁいいや。俺も萌実ちゃんの気持ちを聞いたわけだし、自分だけ隠すのも男らしくないだろ」

 そういう問題だろうか。
 だが上手く話が運んだし、まぁいいや、と、とりあえず萌実は話を合わせた。

「でもイトコをそこまで想えるもんですかね? はるか先輩なんて、それこそ家族みたいなものじゃないんですか?」

「うーん、まぁそうなんだけど。はるみより、はるかのほうが手がかかるっていうか。何か昔から、はるかに構ってたからかなぁ」

 せとみに『手がかかる』と言われるのは如何なものか。
 せとかとせとみだと、断然せとかのほうがしっかりしている。
 それは惚れた故の贔屓目ではないはずだ。

---でもせとか先輩は、何か物凄い抜けてるところがありそうだけど---

 何せ普段のぼーっとさは普通ではないレベルだ。
 魂がどっかに行っているかのよう。

「それ、はるか先輩には言わないんですか?」

「言いそうになったんだけど……。やっぱりイトコだし、今後の付き合いとか考えたら、なかなか……」

「そうですねぇ、一生ものの付き合いですもんねぇ」

 多分普段から家の付き合いも密なのだろう。
 その上学校も部活も同じとなると、振られた場合は目も当てられない。

「厄介ですねぇ。でも頑張ってください。陰ながら応援してます」

「うん、ありがとう。萌実ちゃんも頑張れよ。せとかはとっつきにくいと思われがちだけど、全然そんなことないし。押せば落ちるんじゃね?」

「そう……ですかねぇ。せとか先輩、とっつきにくくはないんですけど、いまいち何考えてるのかわからないです」

 何となく恋愛相談ぽくなったものの、結局は何も得るものはないまま、萌実は部室への山道を登るのだった。
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