結構な腕前で!
「でもせとか先輩は、この魔の中に突っ込んだら、どこに行くかわからないって言ってました。いつもの魔より質が悪いように思います」

 今までそんな恐ろしげなものはなかった。
 萌実の説明に、はるかが渋い顔をした。

「……それもこれも、せとみのせいよねぇ」

「え?」

「せとみがここしばらくさぼってるお陰で、道場解放もできないし。溜まりに溜まった魔が、悪化してるんだと思う」

「あ、なるほど」

「裏部長のくせに、仕事を放ったらかすなんて」

 はぁ、とはるかがため息をつく。
 せとみが部活をさぼっているのは、ライバル土門のせいなのだが。
 はるかはそこのところ、どう思っているのだろう。

「でもこれ見る限り、多少強くなってても、萌実さんの力が及ばないほどではないように思うけど」

「あ、えっと、それはその……。あの、私が煙の中に落ちそうになったときに、せとか先輩が助けてくれて、その、その状態のまま力を使う羽目になったんで……」

 しどろもどろになっていると、土門が、おお、と手を叩いた。

「そうじゃそうじゃ。わしもお手伝いしようとしたんじゃが、南野殿と違って助けられんと叱られた。うむ、もっともよな」

 うんうんと頷く。
 深読みする、ということがない性格らしい。

「しかし凄い力よなぁ。なるほど、あれほどの力を出せるのなら、わしなどまだまだひよっこよ」

 そういう問題だろうか。
 鍛えてどうなる部類のものでもないだろう。

「柔術も、工夫すれば戦力にはなると思うんだけどね。ただやっぱり相手を掴むのが基本だろうから、難しいわね」

 守る何が必要ね、と言いつつ、はるかが意味ありげに萌実を見る。
 反射的に、萌実はぶんぶんと首を振った。
 そこへ、せとみが顔を出す。

「せとかが久々にああなるってことは、相当な魔が出たってことか?」

 1リットルパックの紅茶を直飲みしている。
 こういう奴いるよな、と萌実は冷めた目を向けた。
 もしかして、せとかもこうなのだろうか。

「道場から漏れてきたんだろうね。あそこに集められた子たちが、協力し合っていつもよりパワーアップしましたって感じかな。萌実さんも、体調良くなかったの?」

 何だかほのぼのした分析だ。
 苦笑いしながら、萌実はぽりぽりと頬を掻いた。
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