結構な腕前で!
「そろそろ限界ですかねぇ」

 ぼそ、と呟いた後、せとかは萌実に視線を落とした。

「南野さん、体調は万全ですか?」

「え? あ、大丈夫です」

「じゃ、残りを一気に片付けてしまいましょう」

 そう言って、後ろから萌実の手を握る。
 いい加減このスタイルにも慣れたと頭では思うのだが、身体はそうもいかないようだ。
 どきどきと動悸が速くなる。

「はるみ。こっちにいらっしゃい」

 少し向こうにいるはるみに声をかけると、壺を抱えてすぐに駆け寄ってきた。

「行きますよ」

「あの、せとみ先輩が……」

「粉砕っ」

 はるみがすぐ近くに来た瞬間、せとかは力を放出した。
 ぶわ、と萌実の手の平を通して、せとかの力が道場に広がる。

「うわぁっ!」

 道場の奥から叫び声がし、それを掻き消す勢いで、煙が塊になって降り注ぐ。
 しん、と道場内が静かになると共に、くら、と眩暈がした。

「おっと。大丈夫ですか?」

 すぐ後ろにいたせとかが支えてくれる。
 今日はせとかのほうは何ともないようだ。
 前は萌実が全然集中してなかったので、萌実の力はあまり発揮されなかったのだろう。

---心の動揺が、こうもダイレクトに影響してしまうのも考え物よね---

 萌実は修行僧ではないので、精神を常に平常になど保てない。
 まして好きな先輩に接近された状態でなど難しいのだ。

 それを、今のところは『先輩のため』と思って耐えている。
 それでも前のように、いつもよりも接近された状態であったりすると動揺してしまうのだが。

「今はそんなに動揺してなかったと思うんだけどな」

 ぼそ、と声に出すと、せとかが、ああ、と道場内を見回しながら答えた。
< 133 / 397 >

この作品をシェア

pagetop