結構な腕前で!
「ちょっといつもより量は多いし成長してましたから。放つ力も膨大だったんでしょう」

「成長?」

「魔は集まりすぎたらそれぞれ合体して、徐々に強くなっていくんですよ」

 嫌な進化だ。
 なるほど、この前の廊下の魔のおかしな能力も、強くなった故のことか。

「じゃあ掃除をしましょう」

 そう言われてようやく、はた、と萌実は我に返った。
 せとみも魔と共に吹き飛ばされたのでは。

「せ、せとみ先輩っ」

 だだだっと中に駆け込むと、砕けた魔の塊に埋もれたせとみに取り付く。

「大丈夫ですかっ?」

 ぱんぱんとせとみの身体を払うと、う~ん、と唸りながら、せとみが目を開けた。
 怪我はないようだ。

「ああ、全く。俺まで一緒に吹き飛ばすことねーじゃん」

「ご、ごめんなさい」

「僕の力を使わないといけないほどにしたのはあなたです。今は南野さんがいるからいいようなものの、いつもだったらこの後はるみに多大なる迷惑をかけることになるんですよ。仕事に私情を挟まないで貰いたいですね」

 萌実の謝罪は、せとかの冷たい言葉で遮られた。

「それを言うなら、はるかだってそうだろ! あいつだって部活さぼって柔道部のほうに行ってさ!」

「そうですね。一体どういうつもりなのか……」

 ざっざっと箒で煙の欠片を掃きながら、せとかが面白くもなさそうに言う。
 その様子をちらちら窺いながら、萌実ははるみに近付いた。

「せとか先輩、機嫌悪そうですねぇ」

「そうね。はるかが部活をさぼるってことはなかったし」

 だったら一回ぐらいのさぼりは許してもいいのでは、と思うのは、とりあえず黙っておく。
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