結構な腕前で!
「さっき南野さんにやって貰ったのは、簡単な結界作りというか」

 手を繋いだまま山道を下りながら、せとかが口を開いた。
 折角の手繋ぎデートだというのに、たまに不穏な空気を感じては、都度拳を振るう。
 色気もへったくれもない。

「え、でも私、何もしてないですよ」

 足元に見えたものを踏み潰しながら萌実が言うと、せとかも脇を浮遊しているものを蹴り飛ばしながら頷いた。

「結界自体は、僕が張ったんですけどね。その下準備的な。言ってしまえば初めての共同作業ですね。あ、初めてじゃないか。結構二人で魔を粉砕してますね」

 何その表現……。
 女子の憧れ的なフレーズを、そんな物騒なところで使わないで欲しいものである。

「ま、早い話が餌を仕込んで貰ったんですよ。必要以上に綺麗にした場所には、魔が集まりやすいんです。南野さん自身は強すぎて、寄ってきてもすぐに蹴散らされますけど」

「え、じゃあ私って引き寄せ体質なんですか?」

 それはご免被りたい。

「そうとも言えますけど、でもそれ以上に蹴散らし体質です」

 女子に使うにはあまり嬉しくない表現だ。
 が、無用に怖い思いはしたくない。
 蹴散らす力が強いのはいいことだ、と萌実は鞄をぶん、と回して、背後に湧いた魔を殴りつけた。

「で、さっきは道場の中心をやたらと綺麗に浄化して、僕が結界を張ったんです。場を穢そうとやってきた魔は、まんまと道場に入り込む。でも一旦入ったら最後、結界に阻まれて脱出は不可能。そういう魔が、次の解放日までにあそこに集うわけです」

「Gホイホイみたいですね」

「そうですね。いつも似たような方法で魔を集めてるんですけどね。今日はやっぱり食い付きが良かった。南野さんの力の強さですねぇ」

 喜んでいいところだろうか。
 複雑な思いで、萌実は相変わらず魔を見つけては無慈悲に蹴りを入れるせとかを眺めた。
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