結構な腕前で!
「出たな、真行寺 由梨花(しんぎょうじ ゆりか)」

 せとみがどこからか出した扇を構えて女性を見る。
 凄い名前だ。

 手に持っているユリは名前にちなんでいるのだろうか、と思い、萌実は女性をまじまじ見た。
 相当な美人である。
 ゴージャス振袖と大輪のユリにも負けていない。

「部長さん? ご機嫌いかが?」

 遊女のような高下駄を優雅に操り、由梨花は奥のせとかに近付いた。
 がたた、と椅子を鳴らしてせとかが立ち上がり、後ずさる。
 いつも落ち着いている(ぼーっとしている、とも言う)せとからしくもない狼狽えようだ。

「ふふふふ……。あなたを殺すにゃ刀はいらぬ……」

 空恐ろしいことを呟きながら、由梨花は持っていたユリをじりじりとせとかの顔に近付ける。
 と、しゅん、と由梨花とせとかの間を、一陣の風が吹き抜けた。
 次の瞬間、ぱさ、とユリの花が落ちる。
 せとみが投扇の要領で、花を断ち切ったのだ。

「そうはさせるか。俺たちゃ単に図書室に勉強しにきただけだ」

 低く言ったせとみを、由梨花ががばっと見る。
 そして懐から、しゃきん、と鋏を取り出した。

「わたくしのシンボルフラワーを断ち切るとは、何たる無礼! 天誅ですわっ!」

 振袖と高下駄とは思えない速さでせとみに迫り、由梨花は鋏を振るう。

「うるせぃ! お前がいるだけで、せとかの具合が悪くなるんだから、とっとと部室に帰りやがれ!」

「まぁっ。こちらのシマにのこのこ土足で踏み込んできたのはそちらでしょう! あなただけならともかく、何で片割れも一緒なんですのっ?」

「元々ここは土足OKな場所だろがっ! 図書室は学生共用の場所だ!」

「久々に橘の双子がくっついてないと思ったら、別の女子を連れてるなんて、あなたは何でそうふらふらとっ……!」

「萌実ちゃんはうちの新入部員だ! 新入部員のいないお前のところとは違うんだよ!」
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