結構な腕前で!
「守りに関しては、僕より強いですよ。南野 萌実ですからね」

 えへん、と何故かせとかが胸を張る。
 自分は負けている、と自慢してどうする、とも思うが、好きな先輩に自慢されるのは嬉しい。

 内容が特殊だが、特殊故に、代わりはいない。
 せとかのサポートをできるのは萌実だけなのだ。

「……そういうことですの。確かに守りに関しては最強ですわね。守り……かぁ」

「攻撃よりも、融通が利きそうですよねぇ」

 何のことやらわからない萌実を置き去りに、二人は何かをぶつぶつと考えている。
 雰囲気的に、何か好ましくない展開になりそうな。

「華道部のほうも、おびき寄せ作戦で祓っているのですか?」

「おびき寄せないと、それこそ校舎のどこに湧いたかわかりませんからね。この広い敷地内を一人で探索して回るのは無理ですわ」

「じゃあしばらく、南野さんを華道部へやりましょうか」

 せとかの提案に、萌実はぎょっとした。

「えっ! な、何でですかっ」

「校舎のほうに出る魔は、まだ弱いので発見が遅れても大丈夫なんです。とりあえず華道部で魔を見る練習をしてみましょう」

「そ、そんなっ」

 華道などに興味はない。
 そもそも茶道にだって興味はないのだ。

 茶道部に入ったのは、あくまでせとかがいるから。
 魔にだって当然興味はない。
 なのに華道部なんかに行かされたら、そもそもの目的がないではないか。

「壺の役目も、南野さんがいれば労せず果たせますし」

「嫌ですよっ! 何で私が華道部に行かないといけないんですかっ!」

 思わず噛みついた萌実に、せとかは少し困った顔をした。

「う~ん、こればっかりは仕方ないんですよね。魔を見るといっても、本拠地のここでは魔が強すぎて危険なんです。感覚を掴む前に襲われますからね。南野さんを、そんな危険な目に遭わせたくないですし」

 おぅっ! と萌実は仰け反った。
 里子に出されるのは悲しいが、己を想うが故の苦渋の決断だというのなら仕方ない。

「せ、先輩がそこまで私のことを考えてくれてるのなら……悲しいですけど、奉公に出ます」

「うん。お家(部活)のために頑張ってきておくれ」

 すっかり貧しい山村の民になりきっている二人を、由梨花は冷めた目で眺めた。
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