結構な腕前で!
「せとみは茶菓子が気に入らないと、すぐにとんずらするんです」

 言われて萌実は、本日の茶菓子に目を落とした。
 透明な寒天の中に、さらに色とりどりの小さな寒天が散りばめられている。
 何かでかいが、綺麗だと思うのだが。

「寒天が嫌いなんですか?」

「いえ、寒天が嫌いだったら、茶道ではちょっとキツいです。寒天ではなくて、これ」

 せとかが、懐紙に菓子を一つ取り、菓子きりの先で、寒天の中の僅かな粒を指した。

「牛乳寒が嫌いなんです。これっぽっちじゃ味もないと思うんですがねぇ」

「はぁ……」

 凄い拘りだ。

「まぁ彼は裏部長ですから、いいっちゃいいんですけど」

 いいのか。
 裏の活動のほうがメインって前言ってなかったか?
 やはりせとかは掴み処がない。

 そのとき、表のほうから賑やかな声が近付いて来た。

「部長~、確保しました~」

「お菓子も新しいの買ってきましたよ~」

「「お腹空いたから、鯛焼きにしました~」」

 それは最早茶菓子ではない、と思っていると、すらりと障子が開いて、はるかとはるみと共に、せとみが入って来た。

「やぁ、萌実ちゃん」

 どかりと横に座り、爽やかに笑う。
 せとみを前にすると、萌実は己の心がますますわからなくなるのだ。

 せとみは気安く、ぐいぐい来る。
 一方せとかは終始ぼーっとしていて、何を考えているのかわからない。

 普通にデートとかを考えた場合、断然せとみのほうが楽しそうだ。
 せとかは会話が成り立つのかも不安である。
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