結構な腕前で!
「詰めが甘いですよ。大振りな攻撃は隙も大きい」

 勢い余って部屋の隅まで飛んでしまったせとみに言い、せとかが煙の下半分を柄杓で力任せに叩く。
 どんだけ力があるんだ、と言うほど見事に、固形化した煙はその場から吹っ飛んだ。

 はるみとはるかが、慌てて壺を片手にその軌道を追う。
 煙は壁にぶち当たって、壁を少々破壊した。

「土門! 中の掃除も頼むわよ!」

 はるみが表に向かって叫んだ。
 それに、はるかが反応する。

「ちょっと。土門君を顎で使わないで」

「は? あいつだけ何も働いてないじゃない」

「働いてるわよ! 廊下も道場も綺麗でしょ!」

「そうね。お掃除要員なんだから、今こそ出番なんじゃない」

「お掃除要員じゃないわよ!」

「わかったわかった。とりあえず、土門呼んできてよ」

 きゃんきゃんと吠えるはるかを鬱陶しそうに追いやり、はるみは萌実の傍に戻ってきた。

「萌実さん、どうしたの?」

「……あ」

 はた、と我に返り、萌実もすとんとその場に座った。
 せとかも、じ、と萌実を見る。

「何か……魔が来るのがわかったんですよね」

「え! 魔の気配を察知したってこと?」

 はるみが、目を見開いて萌実を覗き込む。
 が、萌実は、うーん、と曖昧に笑った。

「いやぁ、気配を察知した……ていうほどのもんでもないような。だって、凄い瞬間的に『来る』って思って、次の瞬間には魔が現れてましたし。気付いてから実際現れるまで、短すぎるし」

 ぽりぽりと頭を掻きながら萌実が言うと、せとかも、ふむ、と頷いた。

「その、『来る』という感じは初めてですか?」

「そう……ですね。多分」
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