結構な腕前で!
「なるほど。初めてだから、というのもあるかもしれません。その感覚に慣れたら、もう少しはっきりと、そういったいつもと違う感覚を感じることができるようになるかもしれませんね」

「じゃあやっぱり、華道部に行った甲斐はあったってことですかね」

「そうですねぇ。中が空洞になるって感覚もわかったでしょうし」

 だから、それは怖いんだって、と突っ込みつつ、萌実はちらりとびーちゃんを見た。

「あれのことは、わかったんですか?」

 萌実の問いに、由梨花が茶碗を置いて、但馬に顎をしゃくる。
 但馬が、ささっと何やら怪しげな桐の箱を差し出した。
 あの花器といいこの箱といい、但馬一人でどうやって持ってきたのか。

「せとみ様のお話を伺ってから、わたくしもいろいろ調べてみましたのよ」

 話をしたのはせとみだけではないのだが、そこは綺麗にスルーされている。
 由梨花は、ぽん、と桐の箱を叩くと、蓋を取った。
 中には年代物らしき巻物が納まっている。

「我が家の蔵にあったものですわ。土地の成り立ち的なものが書いてありましたの」

 由梨花によると、昔々、神代の頃、魔が溢れ人に害為しっぱなしでえらく荒れたことがあったらしい。
 そんな折り、山の中から産声が聞こえ、村人が恐々行ってみると、いきなりぽんと赤子が現れた。
 その子の周りだけ、やけに空気が綺麗で、不思議と魔が近付かない。

 やがて赤子が大きくなると、それに伴い力も強くなっていったようで、その力を恐れた魔に命を狙われることが多くなった。
 が、襲い掛かった魔はことごとくその子に滅せられた。
 魔を滅する子ということで村人に崇められたその神の子は、ある地に埋葬されたそうな。
 そこから不思議な植物が生えたとか。

「……ていうか、これだけ?」

「巻物に書けるのなんて、こんなものでしょう」

 しゅるしゅると巻物をしまいながら、由梨花は再度、但馬を見た。
 巻物を受け取り、代わりにこれまた立派な箱を差し出す。
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