結構な腕前で!
「でもさ、萌実ちゃんは、ちょっと状況が違うよ。何か皆、俺たちみたいな仲間はいない」

「でもそれも、今までよりも魔が強力だから、とても一人では対応できない故かもしれませんわよ? 人の思いは昔より汚くなってますし、戦などの理不尽な死も多いですしね」

「……戦って……そんなときからの魔を掃除しないといけないんですか? 前に神の子が現れたのって、いつなんです?」

 せとみのフォローもばっさり斬られ、萌実は力なく聞いてみた。
 せとみが文献を繰り、指を追って数える。

「四百年前とか……そんなもん?」

「そんなほいほい妙な力が現れるわけないでしょう。魔然りですわよ」

 これまた考えてみれば、古戦場に魔が多い、というところからして時代が読める。
 そういうことがあった時代には、神の子はいなかった、ということだ。

「そういうことがあった直後のほうが、負の空気はより強いような気がするけど」

 はるみが、納得できないように首を傾げる。

「その一件だけじゃ、魔としては弱いのでしょう。単なる幽霊ですよ。魔として出現するには、おそらく長い年月が必要なのではないですか?」

 せとみから文献を受け取ったせとかが言い、由梨花を見た。

「これ、ちょっと借りていいですか?」

「何故ですの。それに関しては、わたくしが今説明しましたでしょ」

「でも俺らも、自分の力のことを知るヒントになるかもな」

「せとみ様が必要なのであれば、どうぞ」

 せとかの意見がせとみに変わった途端、ころっと態度を変え、由梨花はせとみに文献を渡した。
< 290 / 397 >

この作品をシェア

pagetop