結構な腕前で!
「あ、ちょっと言い方が悪かったですね。僕もそんな非情ではないですよ。考えられる『使えるもの』をフルで使うことによって、南野さんを守るわけです」

 ずず、とお茶を飲み、せとかがにこりと笑いかける。

「本来神の子一人で対応できることと言えばそうなんですよ。でも、一人でやるから負担が大きい。だから死んでしまうんですよ。折角他にも魔に対応できる力があるわけですから、それならそれを使えば、一人一人の負担も軽くなるのでは?」

「あ、なるほど」

「南野さんを殺すわけにはいきませんのでね」

 笑顔で言われ、どくんと萌実の心臓が跳ね上がった。
 それは単に後輩だから?
 それとも別の意味があるの?

「で、今日はまず手始めに、真行寺さんが食虫植物を穴の周りに植えてみてるんです」

「え、真行寺先輩が? そんなこと、よく承知しましたね」

 あのお嬢様が、土いじりなどするだろうか。

「せとみも行ってますし。それに、忠実な僕(しもべ)がいるじゃないですか」

「……ああ、あの……なんて言ったか、お付きの人ですか」

 お嬢様とくれば執事、と思いがちだが、実際執事というのがどういうものか、庶民にはわからない。
 当たり障りない言い回しが『お付き』である。

「そうそう。但馬さん……でしたっけね。彼が全てやってくれるでしょう」

「そうですね。そう思いますが、彼もびーちゃんを扱えるんでしょうか。あれ、持つだけでも相当危険な気がしますが」

「危険であっても、真行寺さんに命じられれば、やるでしょう」

 いいのか。
 さらっと言う辺り、何となく由梨花と同じニオイがする。

---でもそんなドSな先輩も、私のことは考えてくれてるのかな?---

 びーちゃんや自分の力を使おうというのは、萌実の負担を軽くするため。
 萌実の命を守るためだ。

---まぁびーちゃんに齧られるのと、魔の壺になって死ぬのとでは、重さが違うけどさ---

 もっともびーちゃんに齧られ続ければ人間はどうなるのか、詳しいことはわからないが。
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