結構な腕前で!
「多分さっき南野さんが何か感じたのは、穴の周りにびーちゃんが植えられたのを感知したんじゃないですか? ……植えられた、というか、びーちゃんが上手く根付いた、てことかな? 穴の中の空間と、びーちゃんが共鳴したのを感じたのかもしれませんね」

「あ、そっか。魔の気配かな、と思ったんですけど、いまだに何も現れませんしね。やっぱり気配を視るって難しいですね」

 魔の気配を視る特訓をしたのに、全然成果が現れてないことを恥ずかしく思い、萌実は誤魔化すように、あはは、と笑った。

「そうですねぇ。訓練といっても、実際は大してできませんでしたし。でもそれをしようと思い立ったお陰で、南野さんとびーちゃんの関係もわかりましたし、ひいては魔を殲滅する方法も知れたわけです。全体的な成果としては十分ですよ。それにやはり、人には得手不得手があるわけですし、南野さんが魔よりも壺の気配に敏感であってもおかしいことはありません」

「そう言って頂けると、楽になります」

「気にしてたんですか?」

「ええまぁ。何となく、私はまだまだ戦力にもならないですし。せめて早く気配を察知できれば、もうちょっと皆の役に立つかなって思ってたので」

 いくら萌実の力が最強だと言われても、内在する力というのは、発揮する機会自体がそうないのだ。
 はっきり言うと、せとかが力を使わない限り、萌実の力を使うことはない。

 咄嗟のときは、小さな魔なら素手でぺしっと仕留められるというぐらいで、後は昔から魔に慣れている北条家・橘家のほうが、やることは早い。
 この辺りは経験がものを言うので、魔に接して一年も経っていない萌実が、十何年の経験者に勝るわけがないのだが。

 萌実が言うと、せとかは、じ、と彼女を見た後、静かに茶碗を置いた。
 そして、手を伸ばす。

「気にしないでいいですよ。南野さんは、十分役立ってくれてます」

 撫で撫で、と萌実の頭を撫でながら、せとかが言う。
 萌実は目を見開いた。

「何せ、南野さんがいないと、折角魔の湧き出る穴を見つけたのに、閉じることもできないんですよ」

「そ、そうですね! はい! 頑張ります!!」

 果たしてせとかの力と萌実の力(と、びーちゃんの力)で穴が閉じるのか。
 やってみないとわからないし、萌実とせとかにどれほどの影響があるかもわからない。

 何となく穴が閉じなかったら、せとかは萌実を穴に放り込むかもしれないが、せとかに褒められ、さらに頭を撫でられたことで、そんなネガティブな思考は吹っ飛んでしまう。
 萌実は鼻息荒く、拳を握りしめた。
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