結構な腕前で!
「と、とりあえず、もうちょっとしても野郎が戻らなかったら、俺が行ってみる」

「あらせとみ様。せとみ様がそんなことなさらなくても。疲れてらっしゃるでしょ? ヘリを呼びますから安心なさって」

 艶然と微笑む由梨花に、せとみは顎が外れるほど大口を開けた。
 凄いことを、さらっと言った。

「ヘ、ヘリ……?」

「ええ。上から見たほうが、山の状態もよくわかりますわ。ヘリであれば山頂までひとっ飛びですし」

「凄いわ、由梨花。ヘリだったら確かにすぐね」

 はるみが感心したように言う。
 が、はるかが、キッと由梨花を睨んだ。

「ヘリを出せるなら早く言ってよ。何で土門くんを無理やり行かせたの」

「当たり前でしょう。何故わたくしがデカブツのために動かなければならないの? せとみ様がしんどいのを押して行くと仰るから、協力を惜しまないだけですわ。わたくしがせとみ様のため以外で動くと思わないことね」

 居丈高で上からなので気付かないが、由梨花の忠犬っぷりも相当である。

「まぁまぁ。土門くんも、この中じゃ自分が一番救助に向いてると思ったが故よ。行くって決めたのは彼の意思だし、馬鹿じゃないんだから、無理だと思ったら帰ってくるわよ。はるかが心配してるのは知ってるんだし」

 はるみが項垂れるはるかを慰め、せとみに目をやった。

「じゃあせとみ。ヘリ、お願いする?」

「う……。そ、そうだな。ていうか、ほんとに?」

 せとみの視線を受けて、由梨花の視線が但馬に流れる。
 ささっと但馬が何やら機械を操作した。
 そして由梨花の前に片膝をつくと、恭しくその機械を由梨花に差し出す。
 それを見、由梨花は、さっと扇を振る。

「五分で着きますわ。ちょっと狭いですけど、この少し先の広場に降ろします」

「まじかよ……」

 つくづく庶民離れしている。
 逆玉じゃん? と耳打ちするはるみに拳骨をお見舞いし、せとみは由梨花に続いて茶室を出た。
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