結構な腕前で!
「いやほら、男が華道って、ちょっと抵抗あるだろ。特に俺なんか似合わねぇし」

 珍しくせとみがフォローするのに、はるみがにやりと口角を上げた。
 どうやらここも上手くいきそうだ。

「せとみもはるかも、変な人を好きになるのね。そういう血筋なのかな」

「わたくしは至って普通ですわよ! あんなデカブツと一緒にしないで頂戴」

 ずばんと胸を張って言う由梨花を、はるみは面白そうに見た。

「由梨花の場合は、感覚が庶民じゃないだけかしら? いやぁ、でも大概変だわよ。土門くんが一番普通かも?」

「いや、あの喋り方は十分おかしいですよ」

 萌実の突っ込みに、そっか、とはるみが手を打つ。
 考えてみれば、茶道部も華道部も変人の集まりのような。
 魔を普通に相手にする辺りが、まともでないのだが。

「待って。一番変なのは、せとかかもしれないわ」

 土門は喋り方が変なだけ。
 由梨花は感覚が変なだけ……多分。
 そもそも由梨花の場合は、但馬が最も変かもしれない。

 しかしせとかの場合はどうだ?
 変なところは一つ二つではない。

「いいの? 萌実さん」

 はるみに問われ、萌実は言葉に詰まった。
 冷静に考えると、せとかはかなりの変人だ。
 だが。

「いいんです」

 きっぱりと萌実は言い切った。
 せとかの良さは、多少の変さでは揺るがない。

 洋服を持っておらず人の三倍ほどのご飯を平らげ、食虫植物をこよなく愛することぐらい大したことではない。
 常にぼーっとしていて人の記憶に恐ろしく残らないことが何だと言うのか。

「いいんだ」

 呆れたように言うはるみの反対側で、せとかがにこりと微笑んだ。
< 386 / 397 >

この作品をシェア

pagetop