結構な腕前で!
「おいせとか。早く開けろよ」

 滔々と流れるせとかの説明に、うんざりしたように、せとみが、どん、と扉を叩く。

「事前心得は大切ですよ。僕らのように、昔から魔に慣れてないんですから」

「だーかーらー! 俺がいるから大丈夫だっての」

 せとかの苦言も、せとみはドヤ顔で遮る。
 どの口が言うんだか。
 せとかは小さくため息をつき、がちゃりと鍵を回して南京錠を外す。

「うらぁ!」

 途端に黒せとみが顔を出し、一気に閂を蹴り上げる。
 はるかとはるみが二人掛かりで外していた閂が、せとみの一撃で外れた。

「行くぜぇ!」

 せとみはそのまま中に飛び込んでいく。

「ずるい~、せとみ~」

「今日はそんなに張り切らなくても~」

「「考えなしに魔を蹴散らさないでよ~~?」」

 きゃんきゃん文句を言いながら、双子がせとみの後に続く。

「……全く。南野さんの練習の場だってのに」

 呆れたように言いながら、せとかは萌実を促して道場の中に入った。
 魔には慣れたとはいえ、道場は茶室と違って量が多いのだ。
 一点だけに目を向けておけばいいわけではない。

 武器も小さいし、と、どうしても足が竦む萌実に、せとかが顔を向けた。

「大丈夫ですよ。危ないとなったら、一気に片付けますから」

「は、はいっ」

 何だかんだで、萌実を守ってくれるのはせとかだ。
 入部したての頃からそうである。

 せとみに言われても不安は消えないが、せとかが言うと安心できる。
 こくりと頷くと、萌実も道場に上がった。
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