結構な腕前で!
 ここまで意外そうに言われると、せとかが可哀相になる。
 双子でここまで差をつけなくても。

「いっつも魔が現れたときに助けてくれるのはせとか先輩だし。茶道もちゃんと教えてくれるし」

 とりあえず無難であろう理由を挙げてみる。
 それだけでなく、萌実はせとかに中学時代に一目惚れしているのだから、顔も好きなのだが、残念ながら顔はせとみも同じである。

 それでもやはり、萌実はせとかのほうが好きだ。
 中学時代に見たのも、せとかだと今ならわかる。

 物静かな雰囲気。
 萌実がせとかを見たのは中等部の図書室だ。
 前に図書室で会ったときと、雰囲気が同じだった。

 せとみはおそらく、同じように図書室にいても、雰囲気が違うと思う。

「まぁそうね。そっか、萌実さんは、せとかのほうがいいのか」

 どこか真剣に言い、はるみは何か考え込むように口を噤んだ。
 が、すぐに、ぱっと笑顔に戻る。

「良かった。折角入った後輩に、悲しい思いはして欲しくないものね」

「え、えっと。……もしかして、橘先輩、せとみ先輩を?」

 良かった、と言うからには、はるみはせとみが好きなのだろうか。

「萌実さんの言う『橘先輩』って、私のこと? 私は違うよ」

「じゃあ、はるか先輩が?」

「う~ん、それは微妙」

 そう言って、はるみは季節の饅頭と蜜豆を購入した。

「せとみのほうがね。はるかを好いてるの」

「えっ。そうだったんですか」

「わかんなかった?」

「ええ。だってせとみ先輩、それこそ態度が変わるわけでもないし」

 せとみはどうも、軽い印象だ。
 萌実にも軽口を叩くし、それ故の人気だろう。
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