結構な腕前で!
「面白いわねぇ、萌実さん。せとかにそこまで理解を示してくれる人って、そういないと思うわ」

 軽く言った後、はるみは面白そうな顔のまま、萌実をじっと見た。

「萌実さんは、せとかとせとみ、どっちがいい?」

「うええぇぇっ?」

 いきなりな発言に、萌実は思わず仰け反った。

「ま、聞くまでもないか。皆せとみのほうが好きなのよね。明るいし、誰にでも気安いしね。せとみは結構人気者なのよ」

「えっ……い、いやいや」

 萌実が好きなのはせとかである。
 だがこの数か月で、周りの目もわかってきた。

 友達もせとみのほうがいいと言う。
 せとかのほうは、『あんな暗い人は嫌だ』となるらしい。

「萌実さんも、せとみのほうがいいと思うでしょ?」

 当たり前のように言われ、う、と萌実は言葉に詰まった。
 ここは否定してもいいのだろうか。

 せとかは自分で彼女はいない、と言っていたし、萌実が好いている、とはるみにバレても問題ないかもしれない。
 が、本人に伝わる可能性もある。

 どうしたもんか、と思うが、でもせとみを好いている、と思われるのは避けたい。
 それがせとかに伝わるほうが困るではないか。

「あの、私は……どちらかというと、せとか先輩のほうが……」

 考えつつ、どこか不自然に『どちらかというと』を強調しながら、ぼそぼそと言う。
 それに、はるみが意外そうな顔をした。

「え? そうなの? へ~え、珍しいわねぇ」
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